こんなにもひとりでデスクに向かってばかりいるのに、なんだか「うるさい」と感じる。
2010年あたり、SNSに初めて触れたとき、新時代がはじまったと思った。SNSがみんなのものになれば、世の中はもっとなめらかで公正で、楽しい場所になるだろうなと思った。10年後の今、そのイメージとは異なる情報空間が目の前に広がっている。
とにかく今は、「うるさい」のだ。そこで繰り広げられる、闘争、揶揄、断絶。もちろん誰にでも何らかを言う権利はあるし、それは民主主義社会の素晴らしい進歩だけれど、言葉は悲鳴であり拳であり策略でもあって、様々な用途・意図・怨念を持ったそれらが複雑なレイヤーを構築しながらゴチャゴチャに結合しあい、呪いと祝言の区別さえぜんぜんつかなくなって、いつのまにか巨大でグロテスクでよくわかんない壁が次々に立ちはだかっている。
僕はそんなゴチャゴチャの仲間になりたくなかったから、2020年、なるべく沈黙してみようと思った。一年前の言葉をめっちゃ撤回しているのだけれど、システムのアルゴリズムに則った表現なんてもうぜんぜんしたくなかったし、他人事に脊髄反射して恨み辛みを投げかけるのもよくわからなかった。仕事に向き合って、オムレツを作り、ゲームをたくさんやった。いいことも難しいこともあった。結論めいたことは何も言えないけれど、とにかくそういう選択をした。
新しい年が訪れてもざわめきは増すばかりで、先生が話しはじめるまでにはまだ時間がかかるだろう。永遠に話ははじまらないかもしれないし、それでいいのかもしれない。先生なんてもういなくなっているような気もする。そしてそのざわめきはいつの間にか轟音となって、自らの小さな声を暴力的に拡声して、顔の見えない社会という大きな権力が正義の名の下に人間を苦しめている。そういう場所では風の歌は聴こえない。だから静かに注意深く考え、できる範囲で愉快に生活し、健やかに生きるための準備をしていきたいと思っている。
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とてもうるさい。
01.18, 2021